はじめに
ここ数年、「投資ブーム」という言葉を耳にする機会が増えました。
証券口座の開設数が急増し、SNSでも「つみたてNISA」や「米国株」「高配当株」といった言葉が日常的に飛び交っています。
では、この近年の投資ブームはいつから始まったのでしょうか?
本記事では、2008年のリーマンショック以降を起点に、アベノミクス、つみたてNISA、コロナショック、新NISAなどを通じて、日本における投資ブームの流れを整理していきます。
リーマンショック後の低迷(2008〜2012年)
2008年9月、米国の投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻。
この「リーマンショック」は世界中の株式市場を暴落させ、日本でも個人投資家が大きな損失を抱えました。
- 日経平均株価は2007年の18,000円台から2009年には7,000円台に急落。
- 株式市場から多くの個人投資家が撤退。
- 「投資=危険」「株はギャンブル」というイメージが再び定着。
この時期は「投資ブーム」とは程遠く、むしろ投資離れが進んだ時代でした。
ただし一方で、世界各国の中央銀行が大規模な金融緩和を実施したことで、市場は少しずつ回復の兆しを見せます。
とはいえ日本国内では、投資が一般に広まるムードはまだありませんでした。
アベノミクス相場と株価回復(2013〜2015年)
転機となったのは2012年末、第二次安倍政権の発足です。
掲げられた「アベノミクス」の三本の矢(金融緩和・財政出動・成長戦略)によって円安・株高が進行。
2012年に8,000円台だった日経平均は、2015年には20,000円を突破しました。
この株価回復が、再び個人投資家を市場に呼び戻すきっかけとなります。
さらに2014年には**NISA(少額投資非課税制度)**が始まりました。
- 年間100万円までの投資利益が非課税
- 個人投資家が「投資に挑戦してみよう」と思える仕組みを整備
アベノミクスとNISA制度の登場が重なり、日本に「投資ブームの再来」が見え始めた時期でした。
つみたてNISAの普及と若者世代の参入(2018年〜)
2018年には「つみたてNISA」が導入されます。
これは日本の投資文化に大きな変化をもたらしました。
- 年間40万円、最長20年間の投資枠が非課税
- 対象は低コストのインデックスファンドに限定
- 長期投資・積立投資を前提とした制度
これにより「ギャンブル的な株式投資」ではなく「長期の資産形成」として投資を始める人が増えました。
また、同時期からYouTubeやTwitter(現X)で投資情報を発信する個人が急増。
「投資は特別な人のもの」から「一般的に取り組むもの」へと意識がシフトしていきます。
特に20〜30代の若者世代がつみたてNISAを通じて投資を始めるケースが目立ち、新しい投資ブームの担い手となりました。
コロナショックと米国株ブーム(2020〜2022年)
2020年初頭、新型コロナウイルスの世界的流行により株式市場は歴史的な暴落を経験しました。
日経平均株価は一時16,000円台、米国のS&P500もわずか1か月で30%以上下落。
しかし、各国政府・中央銀行が前例のない金融緩和と財政出動を実施したことで、株式市場は急反発。
わずか数か月で暴落前の水準を回復し、その後はむしろ上昇を続けました。
この急落と急反発をきっかけに、多くの個人が「今こそ投資を始めるべきでは?」と考えました。
SNSと米国株ブーム
- 在宅時間が増えたことで、SNSやYouTubeで投資情報に触れる人が急増。
- 米国株(Apple、Tesla、NVIDIAなど)の存在感が強まり、「米国株最強論」が浸透。
- つみたてNISAの利用者も増加し、インデックス投資や高配当株投資が若者を中心にブームに。
この時期は、日本だけでなく世界的に個人投資家の参入が増えた時代でした。
新NISA制度と空前の投資ブーム(2024年〜現在)
2024年1月、日本の投資環境は大きく変わりました。
新NISA制度が始まったのです。
新NISAの特徴
- 非課税投資枠が年間360万円に拡大
- 非課税保有期間が「無期限」に
- つみたて投資枠(インデックス)+成長投資枠(個別株やアクティブファンド)を併用可能
これにより、「NISAで一生涯、非課税投資ができる」環境が整いました。
投資人口の急増
- 2024年時点でNISA口座数は数千万規模に拡大。
- 特に20〜30代が積極的に参入。
- 銀行・証券会社もこぞって投資セミナーやキャンペーンを実施。
👉 まさに「国民的な投資ブーム」が到来しています。
まとめ:近年の投資ブームは定着するのか?
リーマンショック後の低迷を経て、
- アベノミクス(株価回復+NISA制度開始)
- つみたてNISA(長期投資文化の浸透)
- コロナショック後の米国株ブーム(SNS拡散)
- 新NISA制度(無期限非課税による投資人口の急増)
といった流れが重なり、現在の投資ブームは過去にない広がりを見せています。
過去のブーム(バブル期・ITバブル)は一過性でしたが、今のブームは「制度」「社会背景」「情報発信」が揃っており、投資が日本社会に定着する可能性が高いと言えるでしょう。
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