2025年8月12日、政府は防衛用無人機の大量配備に向け、2026年度予算の概算要求に1,000億円を超える調達費を計上する方針を固めました。これはウクライナ紛争で注目された低コスト無人機の活用を踏まえたもので、短期間で数的優位を確保する狙いがあります。
背景と政策の位置づけ
無人機の重要性
2022年に策定された「防衛力整備計画」では、無人機は**「人的損耗を局限しつつ任務を遂行する手段」**として有効性が強調されています。
既存の無人機導入実績
2025年度予算では、米国製大型無人航空機「MQ-9B」の取得に415億円、小型攻撃用無人航空機に32億円を計上。今回の1,000億円超は、その規模を大きく上回ります。
今回の予算要求の特徴
質より量の戦略
防衛省内の将来戦術検討チームは、まず数を確保し量的優位を築く「質より量」方針を掲げています。
海外調達と国産化の両立
- トルコ製の低価格無人機導入で即戦力化
- 中長期的には国内製造体制の構築を目指す
配備対象と運用目的
- 陸上自衛隊:地上監視・地対地攻撃
- 海上自衛隊:洋上監視・対艦攻撃支援
- 航空自衛隊:空中偵察・敵防空網突破支援
攻撃、偵察、通信中継など多様な任務への活用が想定されています。
国際動向との比較
米空軍のAI無人戦闘機計画(CCA)
米空軍はAI搭載無人ジェット戦闘機を2029年までに数百機、最終的に1,000機導入する計画を発表。価格は2,000万〜3,000万ドル規模で、有人機と連携し攻撃・偵察・通信中継を担います。
日本の計画は規模こそ異なりますが、無人機を戦術の中核に据える点で共通しています。
今後の展望と課題
分野 | 内容 |
---|---|
抑止力 | 数的優位を確保し戦場での損耗を低減 |
調達戦略 | 海外調達で即応力確保+国内体制構築 |
配備範囲 | 陸・海・空すべての自衛隊 |
国際潮流 | 米軍のCCA計画など世界的動きと連動 |
課題 | 国内生産コスト・運用ノウハウ・サイバー防御 |
まとめ
今回の政府方針は、量的優位を先行確保しつつ国産化への道筋を描く現実的なアプローチです。ウクライナ紛争で証明された無人機の有効性を、日本の防衛体制にどう組み込むかが今後の焦点となります。
引用文献
- 沖縄タイムス「政府、防衛用無人機を大量配備へ 26年度予算に1000億円超」(2025年8月12日)
- 山陰中央新報「防衛用無人機、大量配備へ 政府、26年度予算に1000億円超」(2025年8月12日)
- 河北新報「防衛用無人機、大量配備へ 政府、26年度予算に1000億円超」(2025年8月12日)
- The Wall Street Journal 日本版「米軍、AI搭載無人戦闘機を大量導入へ」(2025年8月)
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