1. 結論
北陸電力の2026年3月期第1四半期決算は、売上高は前年同期比で微減したものの、経常利益+1.9%、純利益+5.9%と増益を達成しました。販売電力量の増加や水力発電の堅調な稼働が収益を押し上げ、進捗率は通期予想の約80%に到達。過去5年平均を大きく上回る好調さを示しました。
一方で、燃料費や再エネ調整単価の変動による収益ブレには引き続き注意が必要です。しかし全体としては、**「売上は横ばいだが利益体質は改善し、堅実な好スタート」**と評価できます。
2. 企業情報
- 正式社名:北陸電力株式会社
- 証券コード:9505(東証プライム)
- 設立:1951年8月1日
- 事業内容:電力の発電・販売、送配電事業、設備保守・工事、情報通信など
- 上場市場:東京証券取引所プライム市場
- 資本金:1,176億円(2025年3月末時点)
- 特色:北陸地域を中心に電力供給を担う基幹企業。水力発電比率が高く、再生可能エネルギーの割合で大手電力会社の中でも優位性を持つ。地域密着型の供給体制と安定収益性を備えており、ディフェンシブ銘柄としての性格が強い。
3. 決算概要(発表日・対象期間)
- 決算発表日:2025年7月30日(大引け後)
- 対象期間:2026年3月期 第1四半期(2025年4月〜6月)
決算数値(前年同期比)
- 売上高:1兆8,607.9億円(−0.8%)
- 経常利益:358億1,000万円(+1.9%)
- 親会社株主に帰属する純利益:279億8,600万円(+5.9%)
- 売上営業利益率:19.5%(前期19.2%)
- 通期経常利益に対する進捗率:79.7%(過去5年平均67.1%)
4. 決算の背景とポイント
① 電力販売の増加
- 総販売電力量は前年同期比+16.1%
- 特に卸販売は前年同期比+66.4%と大幅増加
- 一方で小売需要は伸び悩み、全体の売上高はわずかに減少
② 水力発電の寄与
- 北陸電力は水力発電比率が高く、再生可能エネルギー由来の発電が堅調
- 火力依存度の低下により、燃料費上昇局面でも相対的に収益性を維持
③ 燃料費調整制度による差益
- 燃料価格と調整単価の反映タイミングのズレによって「差益」が発生
- この要因が純利益の増加に貢献
④ 財務基盤の改善
- 自己資本比率は20.5% → 21.9%へ上昇
- 有利子負債依存度の低下も進み、財務安定性が改善
5. 中長期的な視点での注目点
- 再生可能エネルギー政策との親和性:政府のGX(グリーントランスフォーメーション)政策の中で、水力発電比率の高さは競争優位。
- 電力需給の安定性:地域的に需要の変動は緩やかで、安定的な収益源となる。
- 課題:再エネ賦課金の制度変更、燃料費の急変動が利益を圧迫するリスク。
6. 投資スタイル別評価
投資スタイル | 評価 | コメント |
---|---|---|
中長期投資 | ◎ | 利益体質の改善と財務強化が進んでおり、堅実な収益を期待できる。 |
配当重視 | ○ | 高配当株として魅力だが、今後の配当方針の確認が必要。 |
株主優待狙い | × | 優待制度はなし。 |
バリュー投資 | ○ | ディフェンシブ株でPER・PBRともに割安水準。下値リスクは限定的。 |
成長投資 | △ | 成長余地は限定的だが、再エネ政策との連動で緩やかな成長余地はある。 |
7. 総評と投資判断
北陸電力の第1四半期決算は、売上高は微減ながら経常・純利益は増加。進捗率も過去5年平均を大きく上回り、極めて良好なスタートを切りました。
短期的には燃料費や制度調整による収益ブレの可能性は残るものの、中長期的には財務基盤強化と水力発電の優位性により、安定的な収益成長が期待できます。
ディフェンシブ性の高い電力株の中でも比較的安心感がある銘柄として、配当重視・中長期保有を狙う投資家には注目すべき存在です。
8. 参考資料・引用元
- 株探「4-6月期 経常は2%増益」
- Yahoo!ファイナンス 決算サマリー・財務情報
- 北陸電力 決算短信
コメント