中国株の信用取引残高が過去最高を記録|2015年との違いと世界市場への影響

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中国の投資家が株式購入のために借り入れた信用取引残高が、**過去最高の2兆2900億元(約3200億ドル/約47兆円)**に達しました。

これは2015年の記録を上回るもので、株式市場において再び「リスクオン」のムードが広がっていることを示しています。

ただし、当時と異なるのは「市場構造」と「マクロ環境」です。以下では、今回の特徴を整理し、暗号資産を含む世界市場への影響を解説します。


信用取引残高が示すリスク選好

  • 新記録達成:2兆2900億元という数字は、2015年のピーク(2兆2700億元)を超える水準です【Reuters】。
  • 株価の上昇:上海総合指数は年初来で15%上昇、CSI300指数も14%上昇し、世界の主要市場を上回っています【FT】。
  • レバレッジ水準:残高は浮動時価総額の約2.3%。2015年の4.7%と比べると依然低く、過度な過熱感は抑えられています【Reuters】。

つまり、リスク選好は高まっているものの「2015年型バブル」とは異なる様相を呈しています。


2015年との比較:過熱と崩壊の教訓

2015年、中国株は信用取引残高が急拡大し、上海総合指数は1年で2倍以上に急騰しました。

しかしその後、信用取引の急速な規制強化と投げ売りにより株価は暴落。世界市場にも波及しました。

今回の違いは:

  1. 残高比率が低い → 浮動株に対する比率が2.3%とまだ抑制的
  2. 規制の学習効果 → 中国当局は2015年の教訓から過剰信用を抑制する仕組みを強化
  3. 資金流入の背景 → 当時の投機熱よりも、低金利と不動産不況による資金シフトの側面が強い

したがって、今回の「リスクオン」はより構造的な側面を持っているといえます。


マクロ経済の背景:なぜ株に資金が集まるのか

  • 不動産市場の停滞:中国経済の成長を支えてきた不動産開発が低迷。安全資産と見られていた不動産が投資対象として魅力を失っています。
  • 低金利環境:人民銀行による緩和姿勢が続き、債券利回りが低迷。株式の相対的魅力が高まっています。
  • 政策支援:国有ファンドや保険会社による買い支えが行われ、当局が市場安定化にコミットしていることが投資家心理を後押し【FT】。

リスクオンの世界市場への波及

中国株の上昇は、他国市場やリスク資産にも影響を与える可能性があります。

過去の事例

  • 2015年:中国株急落は世界株安とリスク回避を引き起こした。
  • 2020年コロナ相場:中国市場の回復が早く、グローバルなリスクオンのシグナルになった。

今回も「中国マネーのリスク選好」は、グローバル投資家に心理的な安心感を与えていると考えられます。


暗号資産市場との比較

一方で、暗号資産市場は慎重な姿勢が続いています。

  • 資金調達率:仮想通貨の永久先物市場における資金調達率は5〜10%と、過熱ではなく中立的水準【Cryptopolitan】。
  • 市場構造の違い:中国株は信用取引残高が明示される一方、暗号資産はデリバティブ市場が中心で、資金フローの透明性に差がある。
観点中国株市場暗号資産市場
レバレッジ信用取引(証券会社経由)永久先物・資金調達率
規制環境政府の直接的管理国ごとに分散、不透明
投資心理政策期待+株主還元ボラティリティ警戒で慎重

両市場ともに「リスク選好の風」を感じてはいるものの、その出方は対照的です。


投資家が注目すべきポイント

  1. 残高比率の動向浮動株に対する信用残高が急上昇するかどうかが、過熱の判断基準になる。
  2. 政策の方向性当局がどこまで信用拡大を容認するか。2015年のような急な規制が入れば相場は急変しうる。
  3. 世界市場への波及中国投資家のリスクオンが米国株や暗号資産に波及するかは今後の注目点。

まとめ

中国株の信用取引残高が過去最高を更新したことは、投資家のリスク選好が高まっている証左です。

2015年と比べて過熱度は低く、政策的なサポートが背景にある点が特徴ですが、「借入に依存した相場」という構造的リスクが存在することも事実です。

暗号資産市場は慎重な姿勢を保っていますが、中国株の動向が投資心理を刺激する可能性は高く、今後も両市場の動きを注視する必要があります。


引用文献

  • Reuters「China’s stock margin financing hits record high as investors chase rally」(2025年9月2日)
  • Financial Times「China’s stock market outpaces global peers as local investors pile in」(2025年9月2日)
  • CoinDesk Japan「中国の信用取引残高、過去最高に」(2025年9月2日)
  • Cryptopolitan「Crypto investors wary as Chinese margin debt hits record」(2025年9月2日)

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