バンダイナムコ(7832)2026年3月期 第1四半期決算レビュー|IP王者の堅実成長

決算レビュー

1. はじめに

エンタメ業界の中でも、バンダイナムコは「IP(知的財産)」を武器に長期的な成長を続けてきた数少ない企業のひとつです。玩具、ゲーム、アニメ、アミューズメントなど多角的に事業を展開し、国内外で幅広いファン層を抱えています。

2026年3月期第1四半期決算では、主力IPの好調やヒット作の発売によって増収増益を達成。特にデジタル事業が全体を牽引しました。本記事では、最新決算の数値、事業別の動き、今後の注目ポイントを整理し、投資家目線で評価します。


2. 会社概要

  • 設立:2005年、バンダイとナムコが経営統合して誕生
  • 事業分野:玩具・ホビー、デジタル(家庭用・モバイルゲーム)、映像・音楽、アミューズメント施設、IPプロダクションなど
  • 主なIP:ガンダム、パックマン、ドラゴンボール、ワンピース、アイドルマスター、鉄拳、Elden Ring
  • 強み:幅広い年代・地域に認知されたIPポートフォリオ、グローバルな販売網、安定した収益基盤

この企業は単なる「玩具メーカー」や「ゲーム会社」ではなく、IPのライフサイクルを最大限活用し、商品・映像・イベントまで多層的に収益化するビジネスモデルを持っています。この構造が、景気の波に左右されにくい安定性を生み出しています。


3. 最新決算ハイライト

  • 売上高:3,004億3,000万円(前年同期比 +7.1%)
  • 営業利益:519億2,100万円(+17.9%)
  • 経常利益:546億5,800万円(+11.4%)
  • 当期純利益:383億2,900万円(+12.6%)
  • EPS:約59.22円(前年同期:52.05円)
  • 営業利益率:約13%

ポイント

  • アナリスト予想を上回る増収増益
  • デジタル事業が業績を牽引
  • 決算発表後、株価は一時6%上昇

4. セグメント別・地域別の業績

セグメント別売上動向

  • 玩具・ホビー:ガンダム、ワンピースといった主力IP商品の売上が堅調。映画・アニメとのクロスメディア展開が効果的に機能。
  • デジタル:Elden Ring拡張パック「Nightreign」が世界的にヒット。既存タイトルの長期販売も利益に寄与。
  • 映像・音楽:アニメ配信収益が拡大し、関連イベントやグッズ販売も好調。
  • アミューズメント:国内施設の来客数が回復。海外施設は一部地域で苦戦。

地域別売上動向

  • 国内:+17.1%の増収。特にIP商品とデジタル事業が好調。
  • アジア:+5.1%、中国・東南アジアでの玩具販売が伸びる。
  • 欧米:為替や競争環境の影響でやや低調。ヒットタイトル頼みの面も。

5. 特筆すべきトピック

  1. ソニーとの戦略的提携ソニーがバンダイナムコ株式の2.5%を取得。狙いはIPの共同開発とグローバル展開強化。ゲーム・映画・音楽をまたぐクロスメディア戦略が加速する可能性。
  2. ワンピースIPの急成長前期比+33.2%の売上増。映画ヒットとゲーム化で世界的に関連商品が売れ、IPブランドの価値がさらに向上。
  3. ガンダムIPの安定性通年で安定した収益をもたらす柱。複数のチャネル(玩具、ゲーム、配信)で収益を確保し、長期的なIP育成の成功例。

6. 株価・バリュエーション

  • 決算発表後株価:一時6%上昇、時価総額約1.2兆円
  • PER(予想):約17倍
  • PBR:約2.1倍
  • 配当利回り(予想):約2.2%
  • 長期チャート:2022〜2024年の高値圏を維持

IP収益の安定性と成長ポテンシャルから、バンダイナムコはエンタメ株の中でも比較的ディフェンシブ寄り。景気後退局面での下落耐性が高い一方、株価水準は割安とは言い難い。


7. 投資アプローチ別 総合評価

投資スタイル評価コメント
中長期投資人気IPの厚みと多角化経営で安定感が高く、時間を味方につけやすい。
配当重視利回りは平均的だが減配リスクは低く、安定配当を継続。
株主優待狙い優待は限定的で経済価値は小さいが、ファンには嬉しい内容。
バリュー投資割安感は薄く、安定性へのプレミアムが価格に反映。
成長投資ゲーム・グローバル展開で伸びしろはあるが、新作依存の波がある。

8. 投資判断(総評)

短期的には新作ゲームや映画公開といったイベントドリブンの動きが株価に影響しますが、長期ではIPの蓄積と多角化経営による安定性が魅力です。

景気変動に強く、エンタメセクターの中ではディフェンシブ寄り。株価が調整した局面では、長期保有目的での投資妙味が高まると考えられます。


参考資料・引用元

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